台湾のオルタナティブ教育=実験教育~多様な学び実践研究フォーラムin九州③

多様な学び実践研究 フォーラム in 九州

「国境を越えて共に学ぶ・つながる~東アジアの多様な学び」分科会報告の続き。

まずは、台湾からの報告です。

ゲストは、王美玲さん。日本に留学経験もあり、現在は台北の大学の日本語学科の先生で、オルタナティブスクールの比較研究をされています。今回のフォーラムのために、わざわざ台北から来てくださいました。

台湾のオルタナティブ教育の歴史を、年代を追って話してくださいました。その中から、興味深かったことをピックアップします。


・台湾では、オルタナティブ教育のことを「実験教育」と呼ぶ。学校であるか否かに関わらず、とにかく実験的に教育を実施すること意味する。

・台湾のオルタナティブスクールは、主に、シュタイナーやモンテッソーリなど、海外の思想や独自の教育理念に基づいている。

・実験教育に関する法律が制定されたのは、2000年、2002年、2014年の3回。オルタナティブスクールは、最初は違法で始まったものだったが、2014年の段階ですべて違法ではなくなる。

・実験教育の形態は次の3つ。「1、非学校形態」「2、学校形態」「3、公立学校の民間委託(公設民営)」。一番多いのは、2番目の学校形態。

・学校形態の「実験教育」が最も多い理由の1つに、少子化によって人数の減った学校が、実験教育の申請をすれば補助金が出て、運営ができるから、というのがある。問題は、このように誰でも申請ができるので、オルタナティブ教育の区別ができなくなってきている。

・台湾で初めてのオルタナティブスクールは、1990年設立の森林小学校。1980年代の後半に、サマーヒルスクールの本が翻訳され、その本に感銘を受けた人たちが作った学校。学費がとても高くて、貴族学校だという批判も受けていた。

・1994年4月10日に「4.10教育改革デモ」という大きなデモがあった。学校教育の硬直化や学歴至上主義への批判から起こったデモで、少人数クラスの実現、高校と大学の増設、教育内容の現代化、教育基本法の成立などを訴える。このデモの中心となったのは、大学教授など、主に社会的な地位のある人たちだった。

・デモの後、最初のオルタナティブスクール・森林小学校の校長が、学校ではないのに「学校」という名前をつけて学生募集をしたことが違法であるとして起訴される。のちに無罪判決。

・デモに参加した人たちが、その後、次々とオルタナティブスクールを設立。法的な根拠がない、運営主体は財団法人、行政に教育を実験する計画を提出、費用は自己負担・・・というように、合法的に私立学校になることができなかったので、オルタナティブスクールになるしかなかった。

・オルタナティブスクールに通うには、経済的な負担が大きい。例えば、1学期間の授業料は、公立なら1~2万円くらい、私立なら5~6万円くらい、オルタナティブスクールは40万円くらい+全寮制なら寮費も必要。


王さんが、日本との大きな違いだと言われていたのは、台湾の実験教育・オルタナティブスクールは、学校化されている・学校になることを目指している、ということでした。

日本の場合は、教育機会確保法で多様な学びを保障する法律を作るからといって、全てのオルタナティブスクールが「学校になる」ことを目指しているわけではないですよね、と。

おそらく、今回のフォーラムに台湾から来られていたのは、王美玲さん1人だったのでは?と思うのですが、帰り際に、日本の方とたくさん話ができて、最新の情報も得ることができて、とても感動した!と言ってくださって、嬉しかったです。

次は、韓国からの報告です。

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