はじめに
2017年、2018年に続いて、韓国・釜山へ、
QDEC(九州デモクラティック教育コミュニティ)で
3回目のフリースクール交流の旅に行ってきました。
2019年3月27日~4月3日の7泊8日の旅でした。
今回は、人数も今までで一番多く、
小学生から大人まで、総勢22人。
小学生〜10代が14人、大人が8人。
子どもは、同じオルタナティブ・スクールに通っている人もいれば、
公立学校に通っている人、ホームスクーリングの人・・・と様々です。
大人は、オルタナティブ・スクールのスタッフもいれば、
子どもたちの保護者の方もいます。
何度も韓国に来てる人もいれば、
初めて海外に出る人もいます。
初めて会う人どうしもいるので、
事前に3回ほど、オンラインで顔合わせをしました。
今回の旅のスケジュール
釜山側でいつも旅のコーディネートをしてくださるジュンホさんは、
日本語が堪能な方で、地元のネットワークもあるので、
毎回、とても頼りになります。
でも、当日までは、オンラインでのやりとりなので、
何事も決まっていくのはゆっくり。
直前になるにつれて見えてくる・・・みたいな感じでした。
3月末は、日本は春休みだけど、
韓国は学校が開いている期間なので、
訪問できるスクールも、今まで以上に増えました。
少し盛りだくさんなスケジュールにはなりましたが、
子どもたちどうしが一緒に遊んだり活動できる機会も作っていただきました。
また、バスや地下鉄を乗り継いだり、歩いたりしながら、移動する機会も多く、
だんだんと、あちらの空気感もつかめてきた感じでした。
【旅のスケジュール】
3/27 フェリーで博多港から釜山港へ/ゲストハウス泊
3/28 「オンセミ学校」訪問/「ウダダ学校」訪問/教師交流会/ホームステイ1泊目(希望者)
3/29 「花学校」訪問/真光学校訪問/「青い野原の放課後学校」訪問/ホームステイ2泊目(希望者)
3/30 ワンデイカフェ&フリーマーケット&音楽交流会(カフェのイベント1日目)/ホームステイ3泊目(希望者)
3/31 教育フォーラム(カフェのイベント2日目)/外遊び・木工体験/ホームステイ終了→ゲストハウスへ移動
4/1 フリータイム
4/2 フリータイム/夜のフェリーで釜山港出発
4/3 朝、フェリーで博多港到着/解散
フェリーの旅と、釜山の交通・宿泊事情
福岡〜釜山は、フェリーで約6時間。
お昼に出たら、夕方到着します。
釜山港に着いたら、
両替したり、wifiルーターを借りたり・・・と、いろいろと手続きをすませて、
釜山駅の近くのゲストハウスへ。
このゲストハウス、無人式のアパートみたいなところでした。
各部屋にキッチン、トイレ、シャワーがあります。
フロントもなく、暗証番号で各部屋のカギをあけるようになっています。
こういうスタイルに慣れていなかったので、驚きました。
韓国ではポピュラーなのでしょうか?!
移動には、バスカードを使いました。
地下鉄もバスも、現金だと小銭が必要ですが、カードならチャージして使えるので、とっても楽です。
釜山の2つのオルタナティブ・スクール
3月28日(2日目)。
この日は、釜山市内の2つのオルタナティブスクールを訪問しました。
釜山には、5つのオルタナティブスクールがあり、各スクールのスタッフが、毎月1回集まってミーティングをしているそうです。
そのうちの2つの学校「オンセミ学校」と「ウダダ学校」に行ってきました。
ウダダ学校は釜山で最初のオルタナティブスクールで、開校20年目。
オンセミ学校は、開校10年目。
どちらの学校も、小さな人数・小さな場所から始まって、
10年〜20年で60人規模の学校になった、という点で、共通しています。
どちらの学校でも、子どもティーンエイジャーたちは学生さんたちの活動に混ぜていただき、その間に大人は、スタッフの皆さんとお話することができました。
2つの学校の様子を紹介します。
国内や世界を旅するプログラムのある、小中高一貫校「オンセミ学校」
小中高校が併設のオルタナティブスクール。
設立10年。地下鉄の駅から歩いてすぐの、都市の中にあります。
この日は、いつもやっているという体操や、
日韓2人ずつでペアになってのスイングダンスを、
学生さんが一緒にやってくれました。
このダンスは、コミュニケーションを目的にやっているものだそう。
言葉はわからなくても、いつの間にか打ち解けていました。
ダンスの先生役は、この学校の卒業生でした。
その間に、大人は、スタッフの皆さんに学校のことを教えていただきました。
この学校のユニークなところは、世界を旅するというプログラム。
例えば、中1で10日間ラオスに、中3で50日間インドとネパールに・・・など。
そして、高2ではヨーロッパに3ヶ月、なんと、無銭旅行で!
韓国の伝統芸能でパフォーマンスをしながら、
ドネーションをいただいて旅行をするそうです。
その他、毎年、国内を徒歩旅行するプロジェクトも。
自炊、キャンプをしながらの1週間の旅。
その準備のためのプロジェクト(授業)があるそうです。
色を塗ってリサイクルされたギター。とってもカラフル!
都市型のオルタナティブ・スクールとして始まった「ウダダ学校」
こちらは、中高一貫のオルタナティブスクール。
釜山では最初に出来たオルタナティブスクールで、設立19年。
昨年9月にも訪問していますが、
ものすごく楽しかった!ウダダの学生が最高だった!!と、みんなから大評判でした。
今回も、お願いして訪問させていただきました。
今回、日本のティーンエイジャーは、
学生さんたちの料理のプロジェクトの仲間に入れていただきました。
グループに分かれて、韓国の伝統料理「トッポギ」を作りました。
その間に、大人はスタッフの皆さんとお話。
この学校の設立の経緯を教えていただきました。
モデルの少なかった都市型のオルタナティブ・スクール
学校のスタートは、貧困家庭の子どもを支援するための団体から。
最初はグループホームを始めようと思ったけれど、
子どもたちから何か学びたいということになり、
学校を始めることになったそうです。
ところが、スタートした当時、
釜山にはモデルになる学校がありませんでした。
いろいろ探している中で、
ソウルに見学に行ったとき、ある学校にピンと来て、
ノウハウを教えてもらえることになりました。
その学校の名前は、「町の中の小さな学校」。
それまで、韓国でオルタナティブ・スクールといえば、
田舎で全寮制の学校がほとんどでした。
都市に拠点を持つオルタナティブ・スクールが出来始めたのは、2000年頃から。
都市型のいいところは、子どもたちが公共交通機関で自分で通ってくることができるということ。
最初は、駅近くの事務所の1室から始まりました。
今は、少し郊外の元食堂だった建物を借りて、リノベーションしています。
子どもたちのやりたいことに沿って、つくってきた学校
また、ウダダ学校は、
何かの哲学や理念に沿ってという学校ではなく、
親やスタッフが作ってきた学校でもなく、
まずは子どもがいたからできた学校。
だから、子どもたちに何をやりたいか・何を学びたいかを聞いて、子どもたちとつくってきた学校。
時間割はない。
1人1人が自分の計画を持つ。
1人で決めるのが難しいときは、一緒に計画をする。
1日の過ごし方はそれぞれ。
1日遊んでいる子もいる。
スタッフの仕事は、子どもを観察すること。
学生が先生役をやったり、卒業生がボランティアで授業のサポートをすることもある。
毎年秋に、1週間の徒歩旅行をやっている。
徒歩旅行は他の学校もやってるけれど、
ウダダの特徴は、自分たちで荷物も全部持って歩くスタイルでやっていること。
コミュニケーションする力
以上、訪問した2つの学校についてでした。
どちらの学校でも感じたのが、
学生さんたちのコミュニケーション力の高さ。
自分たちが持ってるものを
どんどん誰かとシェアしようとする力を感じました。
言葉の壁も、問題なく越えてしまっていました。
これからの時代、ものすごく大事な力かもしれないな、と思いました。
ホームスクーリングから生まれたオルタナティブ・スクール
3月29日(3日目)。
グループに分かれて3つの学校へ訪問しました。
小学校6年生10人の「花学校」、中高のオルタナティブスクールの「真光学校」、そして、公立小学校の子どもたちの学童保育である「青い野原の放課後学校」。
私が実際に訪問した「花学校」について、少し紹介します。
オルタナティブ・スクールの小学校の卒業生で始まった「花学校」
「花学校」は、小学校のオルタナティブ・スクール「花咲く学校」を卒業した6年生10人で始まったばかりの学校です。
「花咲く学校」は、小学5年生までしかないので、
それ以降は、遠くにある全寮制の学校に行くことになるとのこと。
そこを希望しない場合は、公立学校に行くか、ホームスクーラーになるか・・・。
その年は、卒業生10人がホームスクーリングを希望したので、
そこにスタッフ1人がつくことになり、
新たに学校という形でスタートすることになったそうです。
学校の場所は、アパートの1室でした。
そこを拠点に、出かけたりしながら活動しているそうです。
この日は、午前中は、お弁当を作るチームと、スポーツをするチームに分かれて活動。
お昼からは合流して、一緒に公園で遊びました。
子どもたちのホームステイ 〜韓国の人のコミュニケーション力の高さ
さて、子どもたちとティーンエイジャーは、
希望者は、1〜2人ずつに分かれて、3泊ホームステイでした。
初めてホームステイした子もいます。
最初、ホームシックになりかけた子もいましたが、
一晩寝たら回復したと言っていました。
また、ホームステイしないつもりだった子が
やっぱりホームステイしたいと言い出したり。
みんな、いろんな変化が起きているようです。
そんな姿を見ていると、
場の力・場の影響って大きいなあ、と思います。
ホストファミリーの皆さんの、
あの包容力というか、安心感というか、
人を受け入れる力は、どこから来るのかな、と思います。
他にも、電車の中で、お店の中で、街の中で感じた、
何かとサポートしてくれる人の多さ。
韓国の人って、コミュニケーション力高いのかなあ、と思いました。
コミュニティ・カフェでイベント
3月30日(4日目)。
旅もいよいよ半ばに。
4日目・5日目はちょうど土日。
コミュニティカフェ「イウム」で、“Peace Week”と題した2日間のイベントでした。
カフェ・イウムは、商店街の空き店舗を利用して、
オルタナティブスクールの保護者が中心になって、DIYで作ったカフェ。
地域の教育文化活動の拠点にもなっているそうで、
私たちも、来た時は毎回、ここを利用させていただいています。
この日のイベントは、
①「九州の味」ワンデイカフェ(カフェを1日借りて、日本の家庭料理を提供する)
②フリーマーケット
③音楽交流会
でした。
1日カフェで、日本の家庭料理を提供
ワンデイカフェの計画と実施は、ティーンエイジャーを中心に。
メニューは、炊き込みご飯、豚汁、卵焼き、きゅうりの和え物という日本の家庭料理でした。
3時間で、予定は60食でしたが、まさかの80食!
ホームステイ先の家族を始め、今回お世話になった方々が、続々と訪ねてきてくださいました。
超バタバタで、休む間もないくらい、盛況でした。
炊いたご飯が足りなくなっても、何も言わず30分以上も待ってくださったり、
周りの方々も手伝ってくださったり、
私たちがお昼を食べてないだろうからと差し入れくださったり・・・
いろいろとサポートしていただきながら、やり切ることができました。
フリーマーケットと、ワークショップ
カフェと並行して、フリーマーケット。
こちらは小学生と大人を中心に、カフェの中と、外の路地を使って。
日韓それぞれ、準備してきたものを並べて売ったり、
ワークショップあり、けん玉あり、マジックあり・・・まるで縁日みたいでした。
日韓音楽交流会
夕方からは、音楽交流会。
今回お世話になった方々が集まりました。
日本チームからは、二人羽織、手遊び、楽器演奏、マジック、全員での合唱・・・
直前に初めて練習したものもありますが、あったかく見守っていただきました。
ラストは、ゲストで来てくださったクリエイティブ・スクール(世界を旅する学校)の皆さんのドラム演奏。
ノリノリで、超かっこよかった!!と大評判でした。
カフェは地域の教育文化活動の拠点
3月31日(5日目)。
カフェ「イウム」でのイベント“Peace Week”の2日目。
「教育フォーラム」と題した勉強会で、
日本の教育事情について、日本のデモクラティックスクールのスタッフから、報告がありました。
その間に、小学生は、この地域のオルタナティブスクール「花咲く学校」の敷地で外遊び。
ティーンエイジャーは、地域の木工所で木工体験。木を削って箸とバターナイフを作りました。
カフェを中心に、コミュニティの中にいろいろな場ができていて、木工所もその1つだそうです。
さて、この日の午前中まで、ずっとスケジュールが詰まっていましたが、
午後になって、やっと、コーディネートしてくださったジュンホさんと、ゆっくり話ができました。
「せっかく日本からたくさん来てくれるのだからと
協力してくださる皆さんもいろいろと考えてくださり、
私たちも、せっかくの機会だし・・・と思ったけれど、
もう少し余裕もって組んだらよかったですね!」
そして、ジュンホさんが携わっている、3つの活動の話をしてくださいました。
①カフェ
・地域に新しい教育・文化を広げる
②全学び場(大人対象の学びの場)
・青年大学・・・若い人が生き方を学ぶコース。
・デモクラティック教育の教員養成・・・5つのスクールが協力してコースを作っている
③5つのオルタナティブスクールのネットワーク
・高校年齢以上の子どもたちの学びの場を1つのコースに合わせようという提案が出ている。
1つ1つのスクールは人数が少ないので、たくさん集まって出逢うと楽しいから、というのが子どもたちからの要望。
・東アジアの若者が一緒に学べる時間と場所があれば、という案も出ている。
私たちにも参考になること、一緒にできることがあるように感じました。
これからが楽しみです。
カフェを出発する前の、感想文を書いているひととき。
カフェを出発して、全員ゲストハウスへ移動しました。
残りの2日間、帰国まではフリータイム。
この日の夜は、フリータイムに何をしたいか、どこに行きたいか、誰と誰がグループになるか・・・といったミーティングをしました。
旅のおわりに
7泊8日の旅の最後の2日間は、フリータイム。
それぞれやりたいこと・行きたいところを決めて、グループに分かれて過ごしました。
メンバー20人、それぞれ行きたいところも違うので、
調整に時間はかかっていましたが、
それぞれのやりたいこと・行きたいところは、実現できたみたいです。
スライムカフェに行った人、
「恐竜の卵」が出てくるカフェに行った人、
ハリーポッターカフェに行った人、
大きな公園で遊んだ人、
海に行った人、
山歩きした人、
ショッピングを楽しんだ人・・・
あんなところに行った・こんなことした、という話を聞いてると、
みんなよくそんな場所知ってるなあ〜と、新鮮でした。
最終日は、甘川文化村(カムチョン ムナマウル)とチャガルチ市場へ行きました。
甘川文化村は、もともとは、1950年代に朝鮮戦争から逃れてきた人たちの集落で、バラックだったそうです。
それが、2009年からの公共のアートプロジェクトで、こんなにカラフルに生まれ変わったそうです。
今回の旅も、無事終了。
4月3日の朝、博多港で解散して、それぞれお家に帰宅しました。
次の記事では、参加したメンバーの感想などを紹介したいと思います。
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