不登校が問題なんじゃない。本当の問題は・・・〜デモクラティックスクール“まんじぇ”今井恭子さんへのインタビュー

はじめに

こんにちは!
食と農と暮らしのがっこう「風和土(ふわっと)」、れいちゃんです。

多様な学びの場・教育の場に携わる人にお話をうかがう、インタビューを始めました。
これからの学び・教育、生き方等について、多様な選択肢について、一緒に考えていけたら、と思います。

今回のインタビューのお相手は、今井恭子さんです。

今井恭子さんは、愛知県北名古屋市にある子どもの自由と自治を軸とした学びの場、一般社団法人デモクラティックスクール*“まんじぇ”代表。国内外で長年教育の現場に携わった経験から、2006年に“まんじぇ”を開校、日本の子ども達にも、柔軟で多様な学びがある事を知ってもらうために日々情熱を注いでいます。その思いを、YouTube「まんじぇTV」にて発信中。

デモクラティックスクール=民主主義の根本的な考え方に基づいて、子どもたちの自由、自治、お互いの信頼等をベースに運営されている学校。イギリスやアメリカ他、世界各国にいくつもの事例がある日本では、法令による認可を受けていない学びの場として、各地に存在している。

今回は、台湾でのIDEC(International Democratic Education Conference)に参加された直後だったので、そのお話を交えながらのインタビューでした。

国を越えてみんなが平和でいられる場所・IDEC

ーーー台湾のIDECから戻ってきたばかりですねまずはIDECどうだったか、教えてください〜。

恭子さん: 
IDECには、イギリス、ネパール、台湾と3年連続で参加。
そうなると、「去年会いましたね」という人がいて、再会が嬉しいんだよね。IDECファミリーみたいで。

IDECには、子どもを叱りつける人はいない。上からものを言う人は1人もいない。
人種は関係なく、価値観の近い人と話せる。

世界がみんなこうだったら、戦争なんてなくなるのにね、と思う。

「マジックオブIDEC」と、たしか、イスラエスのヤコブ氏が言ってたんだよね。
IDECという決まった団体があるわけじゃないのに、毎年開かれて、次の人たちが手を挙げて・・・それが毎年続いてる。なぜそれが可能なのか、という話があったんだよね。

次のように言ってる人もいたよ。
ふだんだったら、自分たちのスクールの教育の考え方は、マイノリティな感じで、いつも説明しないといけない。
でも、ここに来ると説明は一切必要なく、みんなとそうだよねと話せるのが、すごく嬉しい、と。

ここでは同じ価値観を共有してるけど、それぞれ国に帰るとマイノリティなんだな、という印象があったよ。これがマイノリティじゃなくなったらいいのにな。

日本のオルタナティブ・スクール、フリースクールと、不登校の問題

義務教育は、子どもが学校に行く義務ではない

ーーー日本の場合は、オルタナティブ・スクールやフリースクールに行くのは「不登校になったから」という印象を持つ人が、まだまだ多いのかな。そのあたり、どんなふうに感じてますか?

恭子さん: 
不登校が問題なんじゃなくて、選択肢がないことが問題なんだよね。
未だに、「義務教育は子どもの義務」だと思っている人の数の多さに愕然としますよ。
(教育を整える義務があるのは、国や大人の側で)子どもには「学ぶ権利」があるだけなのに。

学校に行かないことを、「許せない」という人が、たくさんいる。
自由にさせていたらお先真っ暗、その子だけじゃなく社会も成り立たない、みたいに言う人もいるので、そのことに愕然とします。

ーーーなぜ、そんなふうに、学校に行かないとダメだって思うんだろう?

恭子さん: 
自分のやってきたやり方を否定されたくない、というのがあるんじゃないかな。

大学生と話す機会があって、ほとんどの人が、「そんな学校があると通いたかった」と言ったんだけど、中には絶対に受け入れられない子もいたのね。
「今はよくてもあとから困るに決まっている」「そんな人が世の中に増えたら社会が乱れる」というふうに、拒否感を持つ子がいたんだよね。
「そんなんでいいんだったら、私の人生返してくれ」という感想を書いてくれた子もいたよ。

そういう子たちは、すごく厳しく育てられた子たちのような気がする。
あんなに頑張ったのは必要だったと思いたいから、受け入れられないのかな。
親世代もそうなんだと思う。自分たちもそうだったんだから、と。

別のところで、「格差はもっと開いた方がいい」という人がいたんだよね。
「努力したものが報われないのはおかしい」と。

無理やり頑張ってきた人たちなんだろうな、と思ったよ。
今人生が上手くいっていない人は努力が足りなかったからだ、と思ってるんだろうね。

不登校がきっかけではなく、初めからオルタナティブ教育を選ぶ人が増えている

ーーー恭子さんは、日本で20年近くオルタナティブ教育をすすめてきてるよね。他に、今、感じてることってある?

恭子さん: 
ある人から、こんなふうに言われたことがあるの。
日本でオルタナティブ教育をすすめていこうと思っても、法律的には、不登校を支援する法律しかないから、不登校を突破口にするしかないんじゃない?と。

でも、私の感覚だと、少し違うんだよね。
不登校を経由しないで、最初からオルタナティブ教育を選ぶ人が、確実に増えてるんだよね。

不登校になったからフリースクールを選ぶ、というのではない人たちが、確実に増えてる。

でも、そんなふうには見えていない人たちも多いんだよね。
立場を越えて交流するの大事だな、と思ったよ。

ーーー私も、それは感じてる。最初から選択肢としてオルタナティブな学校を視野に入れてる人、確実に増えてるよね。日本でも、認可を受けた学校だけでなく、認可を受けないフリースクールやオルタナティブ・スクールも確実に増えているわけだけど、今、どんな状況なんだろう?

恭子さん: 
ある意味、日本では、放置されている状況かな。

オーストラリアの話なんだけど、本当はサマーヒル・スクール*みたいに自由にしたいけれどできない、という学校があってね。それは違法になるからなんだって

*サマーヒル・スクール=1921年設立、イギリスにある、民主的なスタイルで運営されている学校。最も古いフリースクールと言われ、世界各地でモデルになっている。

私たちは、違法でも合法でもなく、放置されている状態。それは、日本には「不登校問題」があるから。不登校になった子どもの受け入れ先が必要だから。
嬉しい状況ではないけれど、取り締まられることもないから、まだマシかも。
不登校問題があるから、どうしても私たちのような立場の学校に頼らざるを得ないという現状があるからね。

台湾のオルタナティブ教育に思うこと

ーーー台湾では、オルタナティブ・スクールやホームスクーリングは、昔は違法だったけど、たしか合法になったんだよね?

恭子さん: 
何種類かあってややこしかったね。
全部の学校に補助金が出てるというわけじゃないと聞いたよ。
補助金が出ている学校は、維持するのが大変な面もあるみたい。
逆に、国に認可はされてるけど補助金が出ない学校の方が、立ち上げるのは楽みたい。

補助金をもらうと、国の決めたことをやらないといけない、という面もあるみたいだね。

日本でも、オルタナティブ教育に補助金を出すという案は出てはいるけど、それによって多様性が制限されなければいいけどな、と思う。

でも、保護者にとっては、補助金が出る方がいいんだよね。負担は少なくなるし、それで子どもがどこかに行っていてくれたら。

そうなると、他に行くところがないからという理由でうちを選んでいた子どもは、来なくなるよね。
デモクラティックスクールのようなところは、決まったカリキュラムがあるわけじゃないから、そういうところを選ぶ人は限られるかもね。

でも、そんな中でも、補助金のあるなしに頼らずに運営していける方法を探っていくしかないのかな、と思う。

ーーーオルタナティブ教育の法的なバックアップは、日本はまだだけど、台湾では早かったよね。

恭子さん: 
台湾でオルタナティブ教育がすすんでいったのは、政治的な背景もあると思うよ。
中国からの驚異もあるし。デモクラシーを守らないといけない、という。

IDECの大会で、オードリー・タン*さんのお父さんに会ってね。
「デモクラティック教育は国防と同じくらい大事」と話されていたよ。

*オードリー・タン=台湾のデジタル担当大臣を務めていた。ご両親が、台湾のオルタナティブスクール「種子学校」の設立に関わっている。

マイノリティを大事にするという感覚もあるね。
それも政治的背景と関わってるんじゃないかな。

ベースにある教育観は、日本も台湾も韓国も似てるよね。
競争社会の中で行き詰まってる状況も。
そこから台湾は抜けていった感じだよね。

決まっているものを変えるにはパワーがいる。
そこには影響力のある人、例えば議員さんなどへの働きかけも必要なのかな、と。

目の前のことをやっていくことの方が早いんだけど、大元の方もどうにかしないとね、と思っているよ。

>>オードリー・タンさんが日本の若者に向けて書いた本:『オードリー・タン 自由への手紙』

新しい人たちへ届けるためのチャレンジ

ーーーそういえば、恭子さん、YouTubeはじめたんだね。

恭子さん: 
教育の世界にいる人は、ビジネス的な戦略を持って取り組んでる人は少ないよね。
私もそうだったし。ボランティアで頑張ってる人が多い。

今、専門家のサポートを受けながら、YouTubeをはじめたんだけど、新しいチャレンジなんだよね。

影響力が持てるようになると、いろんな効果があると思うよ。
YouTubeを通せば、普段は会わないような人にも話せるし。
本当に言いたいことが全て話せてるわけじゃないけど、まずは見てもらわないと話にならないから、まずはそこから。
興味を持って続けて見てくれる人がいたら、その先で本当に話したいことが伝わったらいいな、と思いながら話してる部分もあるよ。

上手く軌道にのせられたら、こういうやり方もあるという1つの事例になるんじゃないかな、と思ってるよ。

■恭子さんのYouTube「まんじぇTV」はこちら。

おわりに

以上、今井恭子さんへのインタビューでしたが、いかがだったでしょうか?

台湾の話を聞こう、と思ってzoomを立ち上げたのですが、それだけでなくて、教育について、あれこれと聞いてみる時間になりました。

学校や教育とは、本来は何なのか?
私たち1人1人が、現状に違和感を感じていること、そして、確実に気づいていること、あると思います。
制度はいきなり変わらなくても、今すぐにできることも、確実に増えていると感じています。

このインタビューが、必要な誰かに届いていると嬉しいです。

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