台湾のデモクラティックスクールを訪ねて〜QDEC(九州デモクラティック教育コミュニティ)台湾の旅2018

はじめに〜台湾の学校を訪ねることになったきっかけ

QDEC(九州デモクラティック教育コミュニティ)のメンバーで、2018年3月、台湾のオルタナティブスクール・デモクラティックスクールを訪問してきました。約1週間の旅です。

旅のメンバーは11人(ティーンエイジャー4人、大人7人)でした。

きっかけは、2017年8月に参加したAPDEC2017 in東京

ゲストでいらしていた、台湾のホリスティックスクール(全人実験中学)の先生のお話を聞いて、初めて台湾の教育事情や新しい学校の話を知り、面白そう!と思ったからです。
すぐにその場で「今度みんなで訪ねて行きます」と話をして、連絡先をいただきました。

それまで私は、韓国には何度か行っていますが、台湾には行ったことがありませんでした。お話を聞いてから、台湾が急に気になりはじめました。

でも、行きます、と言ったものの、予定を立てるには、APDECで知り合ったホリスティックスクールの先生と連絡を取るしかありません。
何度か英語でメッセージのやりとりをして、日程だけは決めましたが、詳しいことはあまりわからず。
結局、行ってみないとわからないのかな?と思いながら、出発当日を迎えました。

今回、訪問した学校は、Holistic School(全人実験中学)と、Seedling School(種籽親子実験小学)の2校でした。

そこで見たこと・感じたことを、報告します。

ホリスティックスクール(全人実験中学)を訪ねて

今回の旅の前半は、ホリスティックスクール(全人実験中学)で、3泊4日過ごしました。1日目と4日目は移動日だったので、実質は丸2日間です。

台湾で初めての、中学校のデモクラティックスクール

ホリスティックスクールは、民間で運営するデモクラティックスクール。設立は、1995年。中学校としては初めての、デモクラティック教育を取り入れた学校だったそうです。

ところが、建てた学校は、当時の法律では違法。いつ撤去されてもおかしくないというリスクを抱えたままのスタートでした。

それでも、結局は撤去されることなく存続。
2000年には法律が改正され、民間の中学校設立の規制が緩和されました。その後は、条項を1つずクリアしながら、2009年には認可された中学校になりました。

また、2009年までは受け入れ年齢が11~13歳でしたが、2009年以降は18歳まで受け入れる中高一貫校になりました。2018年からは、受け入れ年齢を6歳~18歳にできるよう、認可が下りたそうです。

小学生から受け入れるとなると、学校側の体制の整備が必要になので、学校内での議論はこれからだと言われていました。ちょうど今、試験的に、小学6年生を受け入れていました。

訪問者を特別扱いしない

ホリスティックスクール訪問中、宿泊先は、学校内にある建物でした。寝袋持参で。
やはりゲストの訪問が多いのか、そういう場所があるようです。

食事のときは、先生や生徒たちと一緒に、食堂で食べました。

私たち訪問者も、特別なことは何もなく、とくに設定されたプログラムもありません。
校内で自由に過ごしていいということでしたし、授業も、そのクラスで許可をもらえれば、見学してもいいということでした。

そんな感じだったので、ふだんの学校の雰囲気を感じることができたように思います。

広い学校の敷地

敷地の広さは、正確には聞いていないのですが、広いと感じました。

山の中にあるので、平地ではなく、山があり坂ありのアップダウンの地形です。

街からは離れているので、街に出ようと思ったらなかなか大変そうでした。

敷地が広いということは、1人で過ごしたり、好きな場所で好きなことをして過ごすスペースが、十分確保できる、ということだと思います。実際、1人で好きな場所で過ごしている生徒も、ちらほらと見かけました。

広いウッドデッキがあって、そこで過ごしている人もいました。(昔の生徒が作ったそうです)

自由な授業スタイル

8時半から授業が始まりますが、授業に参加する・しないは、それぞれの生徒の自由選択。
なので、授業が行われている間も、教室に入らずに好きな場所で思い思いに過ごしている学生たちもいます。

また、朝ごはんを食べながら授業を受けている人がいたり、教室の中に入らずに窓の外から授業を受けている人がいたり・・・結構自由なスタイルです。

6人の生徒が集まれば、受けたい授業が成立するそうです。

選択肢はあるけれど、何を選び、どう過ごすかは、各自にまかされている。他の誰かに決められることはない。そういう雰囲気を感じました。

英語の授業で感じた、海外経験のある生徒の多さ

英語の授業にお邪魔しました。生徒は13~14歳。

生徒たちはふだん英語を話す機会がないので、英語でどんどん質問してください、と先生に言われたので、お互いに英語で質問タイムになりました。
(私たちのメンバーに、英語圏出身の人がいたので、横から色んな話を聞くことができました)

先生は、ふだん話す機会がないと言っていたけれど、みんな英語でどんどん話をするので、驚きました。

海外旅行の経験のある生徒が、大半でした。日本に来たという人もいました。
それだけ裕福な家庭の子どもたちが来ている、そして、海外への関心が高い、という理由もあるのだと思います。

やりたいことは掲示板で提案

掲示版があって、そこに予定が張り出されています。

私たちも、やりたいことがあれば提案していいですよ、と言われました。
何も提案しなければ、このまま特に何もないままだったと思います(笑)

せっかくなので、みんなで話し合って、やりたい企画を提案しました。

そしたら、先生が、黒板でお知らせしてくださいました。もちろん、参加したい人が自由参加です。

日本のメンバーからの企画〜お茶会、楽器でセッション、デモクラティック教育の話

私たちが提案した企画の1つが、お茶会。日本のお茶とお菓子を持ち寄りました。
授業が入っていなかったり、時間が空いている生徒たちが、集まってくれました。

それと合わせて、楽器を持ち寄って一緒にセッションしましょう、と呼びかけました。
そしたら、続々と、ジャンベやカホン、太鼓、ギター・・・などを持って、生徒たちが集まってきました。
コップも机も、何でも楽器に。
即興のセッションが始まりました。こうなると、言葉の壁は関係ありません。

ティーンエイジャーどうしは、SNSで連絡先を交換し合ったり、好きな歌やアニメの話で盛り上がっていました。

同じ時間、別の教室では、福岡インターナショナルデモクラティックスクール(F.I.D.S)の代表者の話題提供で、デモクラティック教育についての勉強会が行われました。

全校ミーティング

学校での様々なことを決めていく最高議決機関が、全校ミーティング。

ちょうど、私たちの滞在中に、ミーティングのための準備委員会と、全校ミーティングがあったので、見学することができました。

といっても、リアルタイムで見学しているときは、言葉がわからないので、雰囲気を見て想像しているだけ。
何を話していたのかは、あとで教えていただきました。

この日の議題の1つに、現在は7時~23時となっているwifiの使用を、24時間にして欲しい、という提案が生徒からあったので、それに対する議論がありました。

結局、この時には決まらず、次回への持ち越しになりました。

生徒の中にも、24時間にすることに賛成の人、反対の人、どちらもいるそうで、それぞれ理由があるそうです。賛成が多いのかと思いましたが、そういうわけでもないようでした。

答えが1つではない、簡単ではない問題を、どう解決していくか・・・という過程で、みんなが問題を知り、考えることを経験します。この過程そのものが、ミーティングという場なんだと感じました。

Seedling School(種籽親子実験小学)を訪ねて

2つ目に訪問した学校は、Seedling School(種籽親子実験小学)
1校目のホリスティックスクール(全人実験中学)の先生からの紹介で、訪ねることができました。

首都・台北から、地下鉄やバスを乗り継いで約1時間半、山の中の集落にあります。
廃校になった学校を利用した民間の小学校で、こちらも、デモクラティックな教育の考え方に基づいて運営されています。

学校に滞在したのは、1日目の夜と2日目の日中の、丸1日程度でしたが、そのときの様子を報告します。

Seedling School(種籽親子実験小学)とは

1994年設立。20年以上の歴史のある学校で、現在は子どもが100人近く、先生が11人。

クラスは縦割り。
そのクラスは、各自が所属するベースになる場所で、授業のときは、各自で行きたい授業を選択して教室に移動する、というシステムになっています。

また、これまでは小学校としてやってきたけれど、今年から、18歳までの年齢を受け入れできるようになったとのこと。どうなるかはこれからだと、話しておられました。

保護者も一緒につくる学校~スクールバスや給食のこと

小学校なので、寮ではなく、子どもたちは毎日スクールバスで通っています。多くは台北市内から。片道1時間半くらいかけて、山道を往復しています。

スクールバスは、保護者でバス会社を雇うという形をとっています。大きなバスが2台もありました。

お昼の給食は、保護者が交代で作っています。
給食もいただきましたが、野菜たっぷり、バランスのとれた献立でした。

※こちらの写真は、夜の交流会で保護者の皆さんが作ってくださったお料理です。

授業にお邪魔してきました

私たちも、英語の授業に一緒に参加したり、文化の授業で日本の遊びの紹介をしたりしました。

英語は、ゲームを取り入れた形の授業でした。

日本の遊びでは、「だるまさんがころんだ」が大好評でした。子どもたちのノリがよくて、言葉の壁は全く気になりませんでした。

「世界をより良くする人になって欲しい」 〜先生方との対談より

私たちメンバーから、先生方にいくつか質問をしました。その一部を紹介します。

先生の一番の仕事は、何ですか?

先生
先生

自分をケアすることです。自分をケアすることができる人は、人をケアすることができるから。

先生から子どもたちに願うことは?

先生
先生

この学校に来れるのは、中流階級以上の人たちです(※民間の学校なので、授業料は自己負担)。
そのことを自覚しながらも、そうでない他の人たちの存在を理解できるようなって欲しいです。
そして、世界をより良くするにはどうすれば良いかを、考える人になって欲しいです。

授業で伝えたいことは、何ですか?

先生
先生

数学は、Logic

国語は、communication

そして、クラスや授業そのものは、communication。

新しい学校に価値を見出す人が増えている

Seedling School(種籽親子実験小学)に通うには、日本の私立学校と同じくらいの授業料がかかります。
それにも関わらず、入学希望者の倍率は定員の2倍以上、欠員待ちもあるくらい人気が高いそうです。

こういった新しい学校に価値を見出す人たちが増えている、ということを表しているようです。

おわりに

以上、2018年3月に訪問した台湾のオルタナティブ・スクール、デモクラティック・スクールについて、まとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

日本と同じような学校や教育の問題を抱えながら、その解決のために新しい学校を創ってきた台湾の人たちから私たちが学べること、いろいろあるのではないでしょうか。

今後も、関心を持っていきたいと思います。

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